重要!! 8月12,13日にfcitx5-mozcに関する設定内容を追記しました。また、Chromeに対する記載は削除しました。具体的には、5.4 ~/.bashrcの修正と、gtkアプリケーションのためのConfigファイルの作成 を参照ください
本当に久しぶりの投稿となります。仕事もそこそこ忙しかった事もあったのですが、かなりstable diffusion webUIやComfyUIにハマってしまい、この2つの画像生成AIを動作させるLinuxも最新のLinux Mint固定にしていたため、純粋にLinux configを突っ込んでやっていなかった事が要因です。この画像生成AIに関しては様々な問題にぶつかりつつも、安定稼働するようになったため、一段落とし、再度Linux Configに注力する事にしました。画像生成AIに関する記事は、機会があれば、投稿したいと思います。
さて米国時間では8月9日、日本においては8月10日深夜に2年ぶりのDebianバージョンアップ・・Debian 13 "Trixie"がリリースされました。カーネルは6.12シリーズ、サポートデスクトップ環境の一つGnomeはバージョン48を、KDEはバージョン6を、XFCEはバージョン4.20を搭載。以前のバージョンからの大きな変化としては、実質32bit CPU(i386)がサポートから外れた点(インストールメディアからの削除→サポートの面では縮小となりますが、i386ユーザはDebian 13への移行はNGと考えた方が良いです)、来たる2038年問題に対するため、時刻の型を32bitから64bitへ拡張した点、セキュリティ強化等となります。pre-installアプリや追加導入アプリも軒並み最新に近い状況となっており、満を持して登場してきた感が強い最新Debianとなっています。
今回は、Debian 13 Gnome editionについて、インストール、初期設定、フォント変更等の基本設定、Gnome 48 + Wayland対応fcitx5-mozcを正しく動作させる日本語入力環境構築を中心に投稿を進めていきます。
1.概要
① Kernel:6.12シリーズ
② Gnome:バージョン48
③ ディスプレイサーバ:Wayland
④サポートアーキテクチャ:amd64,arm64,armel,armhf.ppc64el,riscV64,s390x
2.インストール
インストールメディア入手先→https://cdimage.debian.org/debian-cd/current/amd64/iso-dvd/debian-13.0.0-amd64-DVD-1.iso
上記をダウンロード→rufus等を使いUSBスティックをインストールメディアにしてお使いください。
インストールメディアにはnon support firmwareが含まれますので(これはDebian 12アップデートインストールメディアリリースの途中から行われました)、以前のDebianバージョンで一部ユーザが必要だったインストールメディアへのnon support firmwareのセットアップ作業は必要ありません。
これを除くと、概ね、Debian 12のインストールの流れと同じですので以下リンク当方投稿記事の、2.インストール(GPT/uefi、セキュアブートoff)をご覧ください。
→https://www.linux-setting.tokyo/2023/06/debian-12-bookworm.html
尚、今回は、上記投稿箇所の”パッケージマネージャの設定箇所”において、ネットワークミラーを利用しており、具体的には、ftp.yz.yamagata-u.ac.jp を使用しています。
3.初期設定
3.1 sudoを使えるようにする
初期状態では、自分のアカウントでsudoコマンドが使用できません。sudoコマンドを使用可能とするためには、以下の手順で、自分のアカウントをsudoグループに参加させる必要があります。
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suで管理者モードへ→この後、sudo visudoをターミナルに投入 |
↓
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上記赤枠の箇所を自分のアカウントで上書き→Ctrl+oで保存→Ctrl+xでexit(visudoの終了) |
以上で、ご自身のアカウントでsudoコマンドが使用可能となります。尚、visudoを終わらせるため、visudoのwindowを閉じてしまうと、編集結果が反映されません。このため、Ctrl+x でvisudoを終了させる事が必須。
3.2 システムアップデート・アップグレード
ターミナルを使って以下コマンドを投入。
→sudo apt update && sudo apt upgrade
3.3 flatpak環境の構築Debian 13においては、初期状態でflatpakが使用できません。flatpakが必要な場合は以下の手順で、flatpakをインストール&設定ください。
① flatpakインストール
ターミナルを使って以下コマンドを投入。
→sudo apt install flatpak
② flatpakを”ソフトウェア”に統合ターミナルを使って以下コマンドを投入
→sudo apt install gnome-software-plugin-flatpak
③ flathub repository設定
ターミナルを使って以下コマンドを投入
→flatpak remote-add --if-not-exists flathub https://dl.flathub.org/repo/flathub.flatpakrepo
logout/loginでflatpakコマンド及び”ソフトウェア”にてflatpak管理対象ソフトウエアのインストール・削除等の管理作業が行えるようになります。

3.4 gnome-shell extension managerのインストール
extension managerをインストールし、gnome-shell拡張機能のインストール・削除等を行えるようにします。
これは"ソフトウェア"を起動して行います。
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検索を使って extension manager を検索→検索結果 Extension Managerをクリック |
↓
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インストールボタンを押下し、インストール |
以上で初期設定は完了です。尚、gnome環境の細かい設定に必要なgnome tweaksはpre-installされています。
4.基本設定
4.1 デフォルトフォントの変更(オプション)
デフォルトフォントの変更を行います。インストール直後のフォントで良い場合は、このセクションを読み飛ばしてください。
筆者は、デフォルトフォントを、noto-cjk-jpフォントに切り換えます。これは以下の手順で。
① noto-cjk-jpフォントのインストール
ターミナルを使って以下コマンドを投入
→sudo apt install fonts-noto-cjk
② デフォルトフォントの変更
これは、gnome-tweaks(アプケーション名:Tweaks)を使って行います。以下の手順で、デフォルトフォントをnoto-cjk-jpフォントに切り替えます。
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Tweaksを起動→”フォント”へ |
↓
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デフォルトフォントを上記のように、それぞれの利用対象フォントのプルダウンメニューからnoto-cjk-jp系フォントへ変更 |
Firefox等の個別アプリでも、フォント設定変更が必要になる場合があります。
4.2 Windowタイトルバーボタンの設定(オプション)
初期状態では、Windowの最小化ボタン、最大化ボタンが有効になっていません。これは、Tweaksの"ウィンドウ”から行います。

↓
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”タイトルバーボタン”の最大化、最小化ボタンをそれぞれ右側にスライドさせて有効化します |
以上で、Windowのタイトルバーに最小化、最大化ボタンが追加されます。
4.3 アプリケーションインストール(参考)
アプリケーションのインストールについては基本としてお好きなようにという事になります。ただし、Debian 13の場合、webブラウザに関しては、debian repositoryから、Firefox ESRがpre-installされていますが、セキュリティ強化のため、筆者は、sandbox化されたFirefox、Google Chromeをflatpakを使ってインストール、使用するようにしています。
このインストールはflatpakコマンドあるいは、"ソフトウェア”を使って行います。
flatpakコマンド利用の場合は、ターミナルを使って以下コマンドを投入。
→flatpak install chrome firefox
4.4 gnome shell extensionのインストール(参考)
gnome 48では、使い勝手、デスクトップ機能向上のため様々なgnome-shell 拡張機能が準備されています。従来、gnome-shell 拡張機能のインストールはwebブラウザにgnome shell extensionのadd-onをインストールし、主にこのwebブラウザを通してgnome shell 拡張機能のインストール等にまつわる管理を行っていました。使い勝手はお世辞にも良いとは言えず、初心者にとってハードルが低いとは言い難いものでした。これに一石を投じたのが、初期設定の一つとして紹介したgnome-shell extension manager(Extension Manager)の登場です。これによって、容易にgnome-shell拡張機能のインストール、設定、その他管理が行えるようになっています。ちなみに筆者はこのExtension Managerを使って以下のようなgnome-shell拡張機能をインストール・設定しています。
① Dash to Dock:有名なDock機能。アプリケーションアクセスの容易性を実現。上記デスクトップ下部に横配置されたバーのアプリケーションアイコンをクリックすればアプリケーションがクイック起動
② Desktop Wedget(Desktop Clock):上記デスクトップ左側に表示されたアナログ時計・天気予報。時計の色、天気予報の表示地域は設定で変えられます。天気予報の地域設定は、日本語で無いと探せないもの、英語でしか探せないものが混在している点が弱点。
③ Input Method Panel:この後、解説する日本語入力環境fcitx5-mozcに必須。デスクトップ上部のパネル右側にfcitx5-mozcのステータスアイコンを表示。fcitx5-mozcのステータス表示、設定変更、設定後のリロードが行なえます。
④ Places Status Indicator:上記デスクトップの上部パネル左側に表示される”場所”をクリックするとホームフォルダ内のフォルダー一覧が表示され、すぐに目当てのフォルダーにアクセス可能
⑤ Preedit Highlight For Japanese IME:Wayland環境下においてfcitx5-mozcを使用する際、未確定文字列が解りにくくなってしまう弱点がありますが、この部分のハイライト表示機能を追加します。ただ、アプリケーションによって効いたり、効かなかったりする点が弱点。これは致し方なし。
⑥ User Themes:Gnomeのデフォルトテーマをユーザ作成テーマへ変更する際に必須
⑦ Wallpaper Slideshow:いわゆる自動壁紙changer。指定フォルダーに保管された複数枚の壁紙画像を入力として、一定時間経過後、デスクトップの壁紙として自動的に切り替えます。
現在、この機能は、ブログ記載のためOffにしていますが、Onにすると画像生成AIで筆者が作成した壁紙が30分単位で切り替わるようになっています。他にBingの画像を壁紙としてダウンロード・表示させる機能も持っています。
尚上記デスクトップはユーザテーマを適用した結果となっているため、上記拡張機能を適用した直後の外観とは異なります。
gnome-shell拡張機能は、ユーザが作成しているものがほとんどのため、現在から将来に渡る品質や、機能性が保証されていないリスク等をしっかり押さえてインストール&利用が必要となります。
5. wayland上で正しく動作する日本語入力fcitx5-mozc環境の構築
5.1 fcitx5-mozcのインストール&GTK_IM_MODULE環境変数削除
今回は、fcitx5-mozcをGnome 48+Wayland上で正しく動作させる環境を構築してみます(あくまでも今日時点での)。Debian 13のデフォルト日本語入力環境はibus-mozcであり、これで問題が無い場合は、ibus-mozcの継続利用という事で良いと思います。
尚、今回のFcitx5-mozcセットアップの参考文献は、以下となります。ただし、この内容は確定ではなく、日々更新されている状況となります。
Using Fcitx 5 on Wayland→https://fcitx-im.org/wiki/Using_Fcitx_5_on_Wayland
まず、fcitx5-mozcをインストールします。
→sudo apt install fcitx5-mozc
次にim-configを関連ファイルと共に完全消去します。これにより、”GTK_IM_MODULE"環境変数設定情報を消去します。ターミナルを使用して以下コマンドを投入します。
→sudo apt purge im-config
最後に、fcitx5-mozcを自動起動するために、以下Fcitx5解説→Setup Fcitx5のXDG Autostart欄にあるコマンドをそのままターミナルに投入します。
ターミナルにて投入するコマンドは以下の通り。
→mkdir -p ~/.config/autostart && cp /usr/share/applications/org.fcitx.Fcitx5.desktop ~/.config/autostart
以上処理終了後、一旦再起動します。
5.2 Input Method Panel、Preedit Highlight For Japanese IMEのインストール
Extension Managerを使用して、Input Method Panel、Preedit Highlight For Japanese IMEをインストールします。
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Input Method Panelで検索→Input Method Panel右横のインストールボタンを押下 |
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Preedit Highlight For Japanese IMEで検索→Preedit Highlight For Japanese IME右横のインストールボタンを押下
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以上処理終了後、logout/loginします。
5.3 Fcitx5の設定:入力メソッドの変更
再login後、デスクトップ上部パネルにfcitx5-mozcのステータスアイコンが表示されます。最初はキーボードに似たアイコンが表示されます。このアイコンをクリック→表示されるメニュー中の”設定”を選択します。すると、以下”Fcitxの設定”画面が表示されます。
”Fcitxの設定”(起動後デフォルトで表示されるのは”入力メソッド”の設定です)画面を拡大すると以下のようになります。
赤枠で囲んだボタンを利用して、”キーボード - 日本語”を左側ボックスに移動、”キーボード-英語(US)”を右側ボックスに移動、左側ボックスに移動した”キーボード - 日本語”を左側ボックスの最上位に移動し、適用ボタンを押下します。適用ボタン押下時、キーボード/ロケールに関するエラーが出ますが、無視して適用を進めてください。最終的には、"Fcitxの設定”→”入力メソッド”の内容は以下のようになります。
閉じるボタンを押して終了です。
5.4 ~/.bashrcの修正と、gtkアプリケーションのためのConfigファイルの作成
① ~/.bashrcの修正
Xwayland配下で動作するアプリケーションでfcitx5-mozcを使用した日本語入力のためには、環境変数XMODIFIERSについてXMODIFIERS=@im=fcitxが必須となります。また、QTアプリケーションの日本語入力に関連する環境変数QT_IM_MODULEにはibusが設定されているため、これをfcitxに変更する必要があります。このため、セッション開始時にこれら環境変数を反映させるため、~/.bashrcの末尾に以下の2行を追加します。
export XMODIFIERS=@im=fcitx
export QT_IM_MODULE=fcitx
② gtkアプリケーションのためのconfigファイルの作成
gtkアプリケーションについては、環境変数GTK_IM_MODULEの値がnullの状態となっており、fcitx5-mozcを使用するにあたって、gtk2、gtk3、gtk4それぞれの環境に対し、GTK_IM_MODULE=fcitxを反映させる必要があります。このためには、~/.gtkrc-2.0及び、~/.config/gtk-3.0/settings.ini、~/.config/gtk-4.0/settings.iniを作成し、内容として、以下を記載します。
(1) ~/.gtkrc-2.0→GTK_IM_MODULE=fcitx を記載
(2) ~/.config/gtk-3.0/settings.ini、~/.config/gtk-4.0/settings.ini
双方のsettings.iniに以下を記載
[Settings]
GTK_IM_MODULE=fcitx
以上処理終了後、logout/loginします。
5.5 検証結果
Preedit Highlight For Japanese の恩恵は、テキストエディターでは受けられますが、LibreOffice Writerでは恩恵無しです。Chrome+BLOGGERでこの記事は書いてますが、これも同様で恩恵なし。
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テキストエディターでは日本語変換時の未確定文字列が強調表示されます |
筆者が常用する極限られたアプケーション(LibreOffice(writer,impress,draw)、Pinta、テキストエディター,Gnome検索ボックス,Firefox(flatpak版、Chrome(flatpak版)、”ソフトウェア”)では、本日本語入力環境の問題は今の所ありません。また、上記5.4 ~/.bashrcの修正と、gtkアプリケーションのためのConfigファイルの作成の対応で当初日本語入力不可能だったGIMPも日本語入力可となります。
6.評価
Debianのインストールプロセスについては、細かいインストール操作ができる反面、シンプルさに欠けるため評価としてはB。日本語入力環境に関しては日本語指定でのインストールをすればibus-mozcによる日本語入力がインストール直後から行えるため、A。全体として、セキュリティ強化、2038年対応等も含まれ、バージョンアップ直後の安定感も流石Debianと言う事で◎・・で総合評価Aとします。
注意:8月12日、13日にDebian 13 KDE editionの検証を行った結果、本Gnome editionの日本語入力の箇所を大幅に書き換えています。実設定内容やその流れは大きく変わっていませんが、設定の目的を含む骨子は書き換えました。
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